良くあるご相談の一つに、妊娠中の食事について、があります。
無理せずにお食事を楽しんでいただければとは思うのですが、心配になる方のために、いくつか情報提供させていただければと思います。
1. カフェインについて
いくつかの報告がありますが、1日100~600㎎以上で流早産や胎児発育遅延をきたす可能性があるそうです。
1日に1~2杯程度のコーヒーやお茶は問題がないそうです。
2. アルコール
これも諸説ありますが、1日1杯程度であれば問題ないという報告もあるそうですが、日本産科婦人科学会では禁酒を勧めています。飲み始めると抑えられない方もいるので、原則禁酒ですね。
ただし、妊娠発覚前に飲酒があったことを理由に妊娠継続をあきらめる必要はないそうです。
3. ビタミン
悪阻でも言及しましたが、ビタミンB1、B6は有用だそうです。
また、葉酸も妊娠前からの摂取が推奨されています(特に前回神経管閉鎖障害児の妊娠経験がある方は、1日4~5㎎を妊娠11週末まで)が、その後も1日0.4㎎程(サプリメント程度)を妊娠末期まで継続しても良いといわれています。
1日5㎎を妊娠末期まで継続すると、運動神経発達遅延のリスクが高まる、また、喘息等のリスクが上がるのでは、という意見もありました。推奨量であれば、喘息リスクを上昇させる根拠はないそうですが。
ビタミンD接種で、乳児のアトピーリスクが減ったという報告もあるようです。
なお、ビタミンAの過剰摂取は、催奇形性を指摘されています。
何事もほどほどで、お願いいたします。
4. 生もの、肉類
原則として、加熱した方が無難です。
少しの量の刺身や寿司などでは、ほとんどの場合問題ないのでしょうが、絶対大丈夫とは保証できません。
以前、もつ鍋から胃腸炎になって、その後早産になった妊婦さんがいました。妊娠中の食中毒は、その後の赤ちゃんの一生に影響しそうなので、注意が必要ですね。
トキソプラズマ感染(あかちゃんに行くと、低出生体重や肝脾腫、網脈絡膜炎、水頭症、小頭症、けいれんなどの原因となりうる)の予防のためにも、十分火を通した方がよいでしょう。
調理前に数日冷凍すると、より予防できるそうです。ジビエ料理は、十分に加熱した方がよいでしょう。
野菜や果物は、良く洗うか、きちんと皮をむくことが勧められています。
話は脱線しますが、トキソプラズマに関しては、さらに、
・ ガーデニングなどで土を触るときは手袋をつける、
・ 猫はできるだけ部屋飼いで、新しい猫は飼わず、キッチン・食卓に近づけず、トイレの砂は妊婦以外にしてもらい、家族みんなで手指衛生に気を付ける、
などが勧められています。
長い妊娠期間中、自身の体調、あかちゃんの発育といろいろ心配と思いますが、できる範囲でお食事を楽しんでください。
参考文献
産科婦人科学会ガイドライン
周産期医学増刊 周産期相談